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ブリーフィングルームのデスクの上に、無造作に飴が置いてあった。
『ご自由にお取りください』
と言わんばかりだ。大量に買ったもののミッションに突っ込まれたソルジャーの、おそらく置き土産だろう。
「桃味ないか?」
「俺ブドウがいい」
「酒入りはないのかよ、酒入りは」
どうにもザイオン、アルコールが切れるといささかガラが悪い。
飴の山に群がり、自分好みの味を探すソルジャーの中でノヴァは黙々とコーラ味を探していた。
「ノヴァ、たくさんあったらたまにはくれよ」
「五個以上あったらな」
「ソーダ味はダメか?」
「コーラとソーダは違う。炭酸でひとくくりにするんじゃねえよ」
「あっ! イチゴ!」
一緒に牛乳を飲んだらいちごミルクかなあ、と嘯きながらライが、
「なんでそんなにコーラが好きなんだ?」
もっともな疑問を口にした(今更)。
が。
「別に好きじゃない」
その台詞に一同目を剥いた。
「はぁっ!?」
「いつもコーラしか舐めないじゃん!」
「じゃあ、このハッカ舐めろよ!」
シィンが差し出す飴を、ノヴァは眉をひそめて机に戻した。
「コーラの味が俺の舌に合うんだよ」
「………」
それを世間一般に好きと言うのでは。
そこへ、
「あれ、この飴どうしたんだ?」
ヒューがひょっこり顔を出した。その手には紙袋が下げられている。山の中からのサルベージは諦めたらしい、ノヴァはそれを取り上げいつもの飴を咥えた。
心なしかホッとしてるようである。
「マンゴーと、パイナップルと…うわ、マグロ味なんてものもある」
せっせと飴の探索を続けるヒューの肩をザイオンが叩いた。
「苦労するわ、お前」
「え?」
「好き嫌いも分からんのか、あいつは」
「電卓なのにな…」
恋愛音痴以前の問題です。
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