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 ただいま月缶の長編をごそごそ書いてます。
 更新がないのに通ってくださる方にせめてもの恩返し。

 以下SS 

「統括に許可は得た」
 モニタリングに協力しろ、と開発のトップが差し出したコップをノヴァは凝視した。
「………」
 紙コップになみなみと注がれているのは目にも鮮やかなグリーン。メロンソーダにも見えるが、こと開発が絡む限りろくなものではない。
 コップごと窓から放ろうとするノヴァに、すかさずナイジェルが声をかける。
「捨てたら反省文!」
 しかも手書きで。
「これは各チームリーダーに課せられた実験だからね」
 一にカエル、二にカエル、三四がオタマジャクシで五にカエル。冬はカエルと一緒に冬眠していると噂の開発は、春になると新作を持って現れる。
「一生冬眠してろ」
 タッチミーすらこの男が作ったのではないか、と言われているほどである。そんな彼が作った薬など、どんな副作用があるのか知れたものではない。
 だが幸運にも、今回カエルとは一切関係がないと言う。
「これは体型に影響が出る薬なんだよ。既に結果は色々出てるよ。魔法チームは背が伸びたし、召喚士チームは無駄毛が生えた」
「………それはいったい何の実験だ…」
 豆ダヌキ体型の魔法士は目もくらむような美青年になったと言う。本人はたいそう不服だったらしいが、
『あれは反則だろう…』
 と、目撃したソルジャーの度肝を抜いたのは余談である。ちなみに召喚士は絹を裂くような悲鳴を上げ、しばらく鏡の前に立てないほどのトラウマを負った。
「ガーはどうなった」
 促せば、ナイジェルはつまらなさそうに首を振った。
「体脂肪が増えただけ」
「……マッチョを脂肪に変えたのかよ…」
 実に恐ろしい薬だ、とノヴァは顔色を変える。
「やっぱり飲まねえ」
 反省文ならザイオンに書かせる、と息巻くノヴァに開発のトップは鼻で笑う。
「別にいいじゃないか――セトラでもあるまいし」
「…っ!」
 分かっているくせに言う、その性質の悪さにノヴァは顔をしかめ、ぐいっと一気に煽った。
「甘い!」
「普段あれだけ飴舐めてて何言うんだよ。薬の効果は1時間以内に出るからね。結果が出たらよろしく~」
 カエルの歌をゲロゲロ歌いながら出ていく彼は、『カエル大好きっ子さん』と言うラジオネームでよくこの歌をリクエストしている。曲を流さないと翌週大量のカエルの卵を送りつけるため、毎週聴かされる一般リスナーこそいい迷惑であろう。
「…開発の空調でも切るか」
 口直しの飴を咥え、ノヴァは兵舎に戻った。


「おかえりー」
 ヒューが夕飯の支度をしていると、同居人が帰ってきた。
 挨拶をしても生返事なのはいつものこと。気にせずヒューはフライパンの中のオムレツを丸めるのに余念がない。視界の端で、ノアルヴァイスがシャワールームに向かうのが見えた。シャワー上がりに飲む水は冷えていたっけ、と考えながらヒューは卵をポン、と宙に放る。
 それを何回か繰り返しているうちに、ノヴァが濡れ鼠のまま出てきた。だらだらと湯船に浸かるときもあるが、基本ノヴァはカラスの行水だ。
 湯上りのその姿に、ヒューはショックでオムレツを床に落とした。
「ノア!?」
 突然の大声に、部屋に戻りかけていたノヴァが何事かと振り返る。その顔はくっきり不機嫌さを浮かび上がらせていたが、そんなことにビビっていては彼との同居は務まらない。
 何より、怒らせても呆れられても見逃せない現実がそこにはあった。

「湯船でふやけるならともかく、なんで縮んでるんだっ!?」
 

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