「許す、と言え」
その男は麒麟だと言った。
天意を受け、王を選ぶ獣なのだと。
クラウドの足元に膝をつき、見上げる双眸は確かに獣じみている。
何でも言うことを聞く、ずっとそばにいる。
だから自分を選べと、獣は凄む。
自分が王の器だとはとても思えない。だが、目の前に麒麟がいる。
「おれがお前を選んだ。おれを信じろ」
のしかかる王の重責よりも、激しい愛情にも似たザックスの告白にクラウドは眩暈がする。己の王以外決して頭を下げぬ、誇り高い獣の頭をそっと撫でた。実は鬣だと言うその髪は思ったよりやわらかい。知らずクラウドの顔がほころんだ。
「――許す」
「っしゃあ! 任せろ、クラウド。お前に害を為すものは使令に任せず、このおれが直々に鉄槌を下してやるからな!」
拳を握り、力説する麒麟にクラウドは。
「………」
麒麟は仁の生き物じゃなかったのか。
血に弱いはずなのにこの麒麟、返り血浴びたらますます元気になりそう。
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