突然の衝撃に、エレベーター天井の扉をシィンが開ける。
「なんだ?」
そこから小動物を引っ張り出したのと、エレベーターが動き出したのはほぼ同時だった。
「なんだ、ワイヤーを切るんじゃなくてライを落とせばいいのか」
と、最上階で英雄が呟いたことを誰も知らない(ザイオンとドレイク以外)。
「この取説は不良品だな」
そう言って冊子を放り出すセフィロスに、『あんたが不良品だ』とザイオンは心の中で突っ込むのだった。
一方。
「なんか落ちてきた」
横に伸びた小動物を、シィンが携帯電話で突っつく。だが気を失っているようでいて、実はちゃっかり意識のあるライがじわりとシィンに手を伸ばす。
その様子に、余裕とはアレなのか、隙が生まれるのを油断させて待つのか、とヒューが悶々としていると、
「生きてるだろうな?」
エレベーターの扉が外から開かれる。ライがぶつかった衝撃で、ちょうど階の接点に引っかかったようだ。
「非常時でもちゃんとスクワットしたか!?」
「暇ならポエム書けよ!」
「セロリ使った料理って何だっけ?」
出迎えたパワーチームは、不運な事故に遭った二人を労わっているようで労わっていない。
武器やマテリアを持って、この集団は何を攻撃するつもりだったのだろう。
「ヒュー?」
そんなマッチョの中で、腕組みして立ってるノアルヴァイスの姿はマイナスイオンのようだった(ただしヒューに限る)。
が。
(余裕を持つ!)
じゃれ付きたいのをぐっと堪え、ヒューは穏やかに笑って見せる。
「ただいま、ノア」
「………?」
「面倒をかけてごめん。でも、もう大丈夫だから」
「………」
さわやかに笑うヒューを、ノヴァは穴が開くほど凝視した。
内心動じてないくせに、怖かったのつらかったのと嘘百百並び立ててまとわり付く犬が今回に限りおとなしい。
ノヴァは携帯で医局を呼んだ。
「入院して来い」
「………え?」
「お前、いつもと様子が変だ。具合悪いんじゃないのか、それとも閉じ込められてトラウマでも噴出したか?」
とりあえず入院して来い、とぐいぐい背中を押され、ヒューは慌てる。
「いや、ちょ…っ、ノア!?」
「怪我人はどこですか!?」
担架を抱えた医局の人間が目をぎらぎらさせて走りこんでくる。そして嫌がるヒューをあっという間に拘束し、連れ去った。
普段通りが一番です。
そして。
「ノヴァ! 携帯で釣れた!」
おもしれぇ!とはしゃぐシィンの携帯に食らいつき、ぶらりと下がるライに。
「魚拓でもとってこい」
それはいったい何のプレイ。
そしてライは嬉々としてマッパに墨を塗りそう。