前回の更新6/12だよ…。
「…電源切れた」
彼女数人とノヴァに電話しまくったせいだろう、携帯の充電が切れたシィンは思案気に視線を巡らせた。
すかさずヒューは携帯を隠し、
「貸さないぞ」
先手を打ってピシャリと言い放つ。
「ケチ臭い野郎だな」
舌打ちし、シィンは煙草を咥えた。
「おい!」
それへヒューはぎょっと目を剥いた。こんな換気の悪いところで吸うつもりか。おまけに煙草の匂いなどつけて帰れば、同居人の機嫌は二割増しで悪くなること間違いなしだ。
「少しは気を使えよ!」
「やかましい!」
構わず火を点けようとするシィンの目の前を、ヒューは足音荒く横切った。
「おい、どうすんだ?」
「こんなところいられっかよ!」
そう吐き捨て、ヒューはエレベーターの扉を力任せにこじ開ける。
しかし、ちょうど階と階の間で止まったのだろう、開いたそこはエレベーター内部の壁だった。
「………」
如何にソルジャーと言えども素手で壁は崩せず、ヒューは途方に暮れる。
「チッ」
壁を前に立ち尽くすヒューを横目にシィンは煙草の箱を握りつぶし、乱暴に座り込んだ。
「なんだってそう咬みつくんだよ…ああ、ひょっとして」
何か思いついたらしい、シィンはぽんと膝を打った。
「お前の女寝取っちまった?」
だったら悪いな、と言うその呟きは、
「縁起でもないこと言うな!」
ヒューの激しい一喝にかき消されてしまった。
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