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「牧場始めんたんじゃなかったのか?」
 牛はどうした、とザックスが問えば、
「牛は、食うもんだろう」
 と、シィン。
「乳牛もいるんだよ! 俺の身長がかかっている!」
 今更伸びないだろうに、ライは主張を繰り返す。
 つまりは食うか乳を絞るかで揉めており、一頭も買えていないというわけだ。
「両方買えばいいじゃないですか」
 クラウドが折衷案を出すが、甘い!とライに一喝される。
「ホルスタインだろうがジャージーだろうが、こいつにとっては同じ肉の塊だ!」
 むろんシィンは霜降りも大好物である。のどかな放牧風景は、彼にかかれば一瞬でバーベキューの鉄板と化す。
 そのシィンの足元では、シャインと名付けられた子供が『うしー、にくー、ちち―』と声を上げながらぐるぐる回っている。もう一人の子供はと言うと、人見知りするタイプなのかヒューにしがみついて離れない。
「………大きくなりましたね」
 感慨深げにクラウドは目を細め、ザックスに自慢する。
「俺がデリバリーしてきた子供」
「お前、ナマモノまで取り扱ってるのか」
「ああ、でもストライフ、普通の子供はデリバリーするなよ」
 口を挟んだのはザイオンだ。
「どういう意味だ?」
「お前、箱に詰めただけでバイクで持ってきただろ?」
 普通の子どもだったら死ぬ、とザイオンは苦笑する。意外と大雑把なデリバリーサービスだ。
「パソコンですら緩衝材詰めるぞ」
「次は発泡スチロールでも詰めればいいじゃん」
「余計死ぬだろう…」
 ヒューの無責任な発言にドレイクが青ざめた。
「クール便じゃなけりゃいいんじゃね? こいつら丈夫だから」
 言い様ライはシャインを抱き上げる。
 落として壊れない。神羅の保証書つき。子育て初心者にも扱いやすい、と言うがそれは如何なものか。
「何しろソルジャーの遺伝子持ってるからさ」
「だよなあ」
 頷くザックスの横で、「でも」とクラウドが口を開く。
 
「でも、ソルジャーって魔晄を浴びてからなるのだから後天的なものですよね? 遺伝はしないんじゃないですか?」
 
 ぼとり、とショックでライが子供を床に取り落とすが、シャインは泣きもしなかった。アルは支えがなくてもコアラのようにヒューにしがみついている。
「…ぁ………」
「………」
「…あれ?」
「そっかー…」
 ソルジャーの遺伝子はクローンであろうと受け継がれない――そんな当たり前のことに、誰も気づかなかったのだろうか。
 呆然自失な元ソルジャーを見、クラウドは思わずにおれない。
 

 
 ソルジャーの条件。
 それは。
 
(…ボケ気質か……)
 
 ならばソルジャーになれなくても諦めがつく。
 むしろなれなくて良かった。
 ようやく吹っ切れたクラウドだった。
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