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「あれ? ドレイク帰ってのか?」
 買い物帰り、兵舎のロビーで郵便物を受け取っていたドレイクの姿を見てザイオンが目を丸くする。その横にいるのはノヴァだ。またアメを舐めているのか、口には棒を咥えていた。
 てっきりミッションかと思ってた、と言うザイオンにドレイクは憮然とする。
「だってオレ、今日デートだもん」
 待ち合わせは夕方だったから、昼のうちに掃除をして買い物して、ベッドには布団乾燥機を突っ込んで、夜はふかふかの布団で眠るのだ(『彼女と外泊して来いよ』と、速攻突っ込まれた)。
「悪い、留守かと思ってお前んちのベランダにビールケース入れたわ」
 頭を下げながらもザイオン、悪びれた様子はまるでない。隣室の住人は仕切ってある壁を突き破って、ドレイクのベランダを酒倉にしている。
「お前んちのベランダ、広いもんな」
 と、ノヴァ。
 ドレイクの部屋のベランダは建築上の関係か他の部屋よりも広い。それを利用して、簡易物置を作って趣味の轆轤を回したりするのだがなまじ湿度設定できるものだからザイオンのワインセラーにもなったりする。
「まあ、これでも舐めとけ」
 慰めのつもりか電卓が差し出すアメはソーダ味だった。
「間違えて買ったから、やる」
「押し付けるなよ…」
 呆れつつ受け取ろうとして、横から奪われた。
「ドレイクは甘いの嫌いだから」
 だよね?と目で威嚇しながらもヒューはしっかりドレイクの足を踏んでいる。
「ヒュー…」
 ノアルヴァイスが他人に差し出すのは例えゴミでも気に食わない、犬の心の狭さに辟易する一同だった。


 ベランダを侵略され、もらう筈だったアメももらえず足を踏まれたドレイクはよろよろと部屋に戻る。
 デートの時間は迫っている。急いで支度をしなくては。
 そこへインターフォンが鳴った。
「シィン?」
 珍しいこともあるものだ。ドアを開けると、街で見知らぬ女からカードを預かったと言う。それは今日これから会う予定だった彼女の名だった。変更があったのか、だったら直接電話をくれたらいいのに、と思いながら古式ゆかしく彼女からのカードを受け取る。
 そこには一言。
『このカードを持ってきたソルジャーを紹介して』
「………」
 ――泣きたい。
 じゃあ、と次のデート先に向かうシィンを涙を飲んで見送り、ベッドで不貞寝しようとしたらふかふかのベッドにはなぜかライが気持ちよさそうに寝ている。ぴすぴすと鼻を鳴らす様はまさに小動物。
 深いため息をつき、録りだめしてた昼のドラマでも見ようとリビングに向かう。確か今日が最終回だったはずだ。
 しかしレコーダーのコンセントは外され、代わりにヒーターの電源が入って絶好調のハムスターがからからと滑車を回している。
『世話を頼む』。
 ガーウェインからのメモをぐしゃりと握りつぶし、ドレイクはベランダに立った。目がしみるのは空の青さのせい。

 

 こんな彼にもファンがいる…ような気がする。


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