「あ、浮気してる」
と言ったヒューの声は死神を示しているのではない。
狼の蒼い目は、大きなブナの木の枝に座る二匹のリスに向けられている。
死神に懐いている、肝の太いリスに、これまた別なリスが毛づくろいなどして構っている姿は実に牧歌的で微笑ましい。
「メスの匂いがする~」
笑うヒューに、シィンは憮然として茶をすする。
「あれはたぶん兄弟リスだ」
リスも、ほんとうはシィンのそばに行きたいのに兄弟が離してくれずにせわしく尻尾を振っている。
そんな感情を感じ取ったのだろう、メスのリスは木の下の死神に向けて思いっきり。
――どんぐり投下。
「っ!」
この間は、座った場所にイガ栗が仕込まれていた。
「………」
痛くはないが、結構つらいシィンであった。
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