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「どうもありがとうございました」

 そう言って、少女は頭を下げた。
 相手は銀髪と黒髪の二人組だ。
 ほんとうに、彼らにはいくら礼を言っても足りない。森でモンスターに襲われ、間一髪のところを助けられたのだ。おまけに村まで車で送ってくれた。
「気にしなくていい」
 と銀髪は言ったけれど、表情一つ崩さぬ仏頂面が気になった。
 内心とばっちりを食ったと思ってはいないだろうか。車を運転している間もずっとそうで、大変気まずい思いをしたのだ。
 もう一人はと言うと、車に乗り早々助手席で眠りこけて今ようやく起きたところだった。
 車から下りた彼はひょろりと背が高い。思いっきりあくびをし、
「着いたのか?」
 と見回す顔は恐ろしく整っていた。
 モンスターを直接倒したのはこの黒髪の方である。双剣を操る様は凄まじく、しかも今や廃れてしまったマジックマスターでもある。
「ほんとうにありがとうございました。あの…良かったら少し休んでいかれませんか?」
 と勇気を出して誘ったのには、もう少し彼らを見ていたかったからである。
 だが、不意に携帯が鳴った。銀髪の方だ。舌打ちし、『悪い』と言って少し離れた。
「ああ、うん」
 電話の相手は身内なのか、さらに素っ気無い口調だ。
「…少し遅れてる。あ!? 何でオレの居場所分かるんだ? まさか発信機つけてねえだろうな?」
 そう言って車の周りをぐるぐる回る。
「あの…急いでたんじゃない? 早く帰らないと、おうちの方が心配するわ」
 申し訳ない気持ちいっぱいでそう口にすれば、男は首を振った。
「あいつんとこが過保護なんだよ。…でも、オレも連絡入れておくか」
 煙草を咥え、携帯を取り出す。
「ライか? うん、もう少しで帰る。そっちで変わったことは…は? 突き指した? そうじゃなくてもっと他にないのか!?」
 その横ではまだ銀髪が攻防を続けている。どうやら迎えに来るいらないで揉めているようだ。

「ヒュー! あんまぐだぐだ言うと、もう口きいてやんねえぞ!」

『オレ、愛情は吐いて捨てるほどあるけど、信用はこれっぽっちもしてないから』
 そんなことを常々耳にタコが出来るくらい聞かされていたのだ、腹立たしい気分で電話を切ると、隣の男と目が合った。
「信用されてないな」
「お前といるからだろ」
「馬鹿言え。――運転代わるわ」
 そう言って運転席に向かう彼へわずかに顔を引き攣らせ、銀髪は車の周りにぺたぺたと『危険』マークを貼り付ける。
「これから気をつけろよ」
 じゃあな、と手を振り車は。
「っ!!」
 凄まじい勢いで走り出した。――バックへと。
「………」
 少女は言葉を失う。そう言えば、モンスターに襲われたときも彼らは車で突っ込んでこなかったか。あれは攻撃ではなく仕様だったのか。


「馬鹿シャイン! 殺す気か!?」
 銀髪が助手席から飛び出て早々喚く。
「ギアをちょっと間違えただけだ!」
「間違えるか、んなもん!」



 ミクシィで引っかかった方多数。
 
 
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